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上司や同僚に相談・質問する時のアサーション:聞きやすい伝え方と会話例

Tags: アサーション, 職場, 人間関係, コミュニケーション, 相談, 質問

上司や同僚に相談・質問する時のアサーション:聞きやすい伝え方と会話例

職場で業務を進める上で、上司や同僚への相談や質問は欠かせません。しかし、「忙しそうだから声をかけにくい」「こんなこと聞いたら迷惑かな」「自分で調べれば分かるのでは」といった考えから、相談や質問をためらってしまうことはないでしょうか。結果として、業務が滞ったり、後から大きな問題に発展したりすることもあります。

アサーションは、相手を尊重しつつ、自分の意見や要求を適切に伝えるコミュニケーションスキルです。このアサーションの考え方は、職場での相談や質問の場面でも非常に有効です。今回は、上司や同僚に相談・質問する際に役立つアサーティブな伝え方と具体的な会話例をご紹介します。

なぜ相談・質問にアサーションが必要なのか

アサーティブな相談・質問は、単に自分の知りたいことを聞くだけではありません。相手の状況や感情に配慮しつつ、自分の必要な情報をスムーズに得ることを目指します。これにより、相手に不要な負担をかけずに済むだけでなく、円滑なコミュニケーションを通じてより良い人間関係を築くことにも繋がります。

アサーティブな相談・質問の基本

アサーティブに相談・質問するためには、いくつかの基本的なポイントがあります。

  1. タイミングを見計らう: 相手が明らかに集中している時や、会議の直前・直後などは避けるように努めます。声をかける前に、相手の様子を観察する配慮が大切です。
  2. 準備をする: 相談・質問内容を整理し、何が分からず、何を明らかにしたいのかを自分の中で明確にしておきます。可能であれば、自分で試したことや調べた範囲も伝えると、相手は状況を把握しやすくなります。
  3. 相手への配慮を示す前置きを入れる: 忙しいかもしれない相手に対して、「お忙しいところ恐れ入ります」「今、少々お時間よろしいでしょうか」といったクッション言葉を加えることで、配慮の姿勢を示すことができます。
  4. 結論や最も聞きたいことを先に伝える: 状況説明が長すぎると、相手は何についての相談・質問か理解するのに時間がかかります。「〜の件で、〇〇についてお伺いしたいのですが」のように、要点を先に伝えるとスムーズです。
  5. 具体的な状況を伝える: 抽象的な質問ではなく、「〇〇の資料を作成しているのですが、△△の部分のデータが合っているか確認したいです」「このコードの××の部分でエラーが出てしまい、原因が分からず困っています」のように、具体的な状況を伝えることで、相手は的確なアドバイスをしやすくなります。
  6. 相手の回答を丁寧に聞く: 相手が答えてくれたら、しっかりと耳を傾け、理解できない点は確認します。感謝の気持ちを伝えることも忘れてはなりません。

状況別アサーティブな相談・質問の会話例

ここでは、具体的な職場での状況を想定した会話例をご紹介します。

例1:忙しそうな上司への相談

新しい業務の進め方について、上司に確認したい事項がある場面です。上司はデスクワークに集中しているようです。

NG例:遠慮しすぎる (上司の様子をうかがって、声をかけられずに結局自分で抱え込んでしまう)

OK例:アサーティブな伝え方

あなた: 「〇〇部長、お忙しいところ恐れ入ります。今、少々お時間よろしいでしょうか。」 上司: 「はい、何でしょうか。」 あなた: 「ありがとうございます。来週提出予定の△△プロジェクトの企画書についてご相談したいのですが、先日ご指示いただいた××のデータについて、解釈に少し迷う部分があり、確認させていただきたく思っております。この件で、5分ほどお時間を頂戴できますでしょうか。」 上司: 「ああ、△△の件ですね。大丈夫ですよ。」 あなた: 「ありがとうございます。具体的には〜(準備しておいた内容を説明)〜という状況なのですが、この部分の解釈は〜(具体的な質問)〜で合っておりますでしょうか。」

ポイント: * 「お忙しいところ恐れ入ります」「今、少々お時間よろしいでしょうか」で相手への配慮を示しています。 * 何の件で、何を相談したいのか、具体的に伝えることで、相手はすぐに状況を把握できます。 * 必要な時間の目安を伝えることで、相手は対応の目処を立てやすくなります。 * 自分で迷っている点を具体的に示し、質問内容を明確にしています。

例2:専門知識のある同僚への質問

自身があまり詳しくない分野について、知識のある同僚に質問したい場面です。

NG例:曖昧な質問、相手の状況を考慮しない あなた: 「ねえ、〇〇さん。この前言ってたデータのことなんだけどさ、あれどうなってるの?よく分かんなくて。」 同僚: 「え、どのデータ?」

OK例:アサーティブな伝え方

あなた: 「〇〇さん、もし今手が空いていたら教えていただきたいことがあるのですが、大丈夫でしょうか。」 同僚: 「はい、何ですか。」 あなた: 「ありがとうございます。先日〇〇さんが担当された△△のレポートについて、参考にさせていただいているのですが、××の分析手法について少しお伺いしたいことがあります。レポートのP.〇に記載されている図の読み方について、自分で調べてみたのですが、完全に理解できず困っております。〇〇さんがこの分野に大変お詳しいので、もしよろしければ、図の見方や、関連する基本的な考え方について、5分ほど教えていただけますでしょうか。」 同僚: 「ああ、あのレポートですね。大丈夫ですよ、どこが分からないですか?」 あなた: 「ありがとうございます。具体的には〜(準備しておいた具体的な質問内容を伝える)〜という点が分からず、困っております。」

ポイント: * 「もし今手が空いていたら」と相手の状況に配慮する言葉を加えています。 * 何を、誰に、なぜ聞きたいのか(相手の知識を評価していること)を具体的に伝えています。 * 自分で調べたり考えたりした範囲を示し、「困っている」と素直に伝えることで、相手は力になりたいと感じやすくなります。 * 聞きたい内容と必要な時間の目安を伝えています。

例3:簡単な確認だが相手の手を止めさせたくない場合

資料の内容について、一点だけ簡単な確認をしたい場面です。相手は別の作業をしています。

NG例:要領を得ない、返事を急かす あなた: 「あの、すみません。ちょっといいですか?この資料のことなんですけど、えっと、この部分のことなんですけどね...(ごにょごにょ)」 同僚: (結局何を言いたいのか分からない)

OK例:アサーティブな伝え方

あなた: 「〇〇さん、簡単な確認で恐縮なのですが、今よろしいでしょうか。1点だけすぐに終わる質問があります。」 同僚: 「はい、どうぞ。」 あなた: 「ありがとうございます。〇〇の資料の、P.〇にある××の数値についてなのですが、これは先月の実績データで間違いないでしょうか。念のため確認させていただけますと幸いです。」 同僚: 「ええ、それは先月のデータで間違いありません。」 あなた: 「承知いたしました。迅速にご回答いただき、ありがとうございます。」

ポイント: * 「簡単な確認で恐縮ですが」「すぐに終わる質問があります」と伝えることで、相手に大きな負担ではないことを示唆しています。 * 何についての、どの部分の、何の確認かを具体的に伝えています。 * 「念のため確認させていただけますと幸いです」と丁寧な言葉遣いをしています。 * 回答後には必ず感謝を伝えています。

アサーションを使った相談・質問の実践に向けて

アサーティブな相談や質問は、練習することで身につきます。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、今回ご紹介した会話例を参考に、まずは簡単な確認や質問から試してみてください。

相手への配慮を示しつつ、自分の伝えたいことを明確にするアサーションのスキルは、相談・質問の場面だけでなく、職場のあらゆるコミュニケーションであなたの助けとなるはずです。積極的に実践し、よりスムーズでストレスの少ない人間関係を築いていきましょう。