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職場で感謝・励ましを伝えるアサーション:ポジティブな関係を築く具体的な会話例

Tags: アサーション, 職場, 感謝, 励まし, 人間関係

職場での感謝や励まし、どのように伝えていますか

日々の業務において、私たちは周囲の様々な人に支えられています。同僚に助けられたり、後輩が良い働きを見せたり、チームで困難を乗り越えたりする場面があるでしょう。そのような時、感謝や励ましの気持ちを適切に伝えることは、職場の人間関係を円滑にし、チーム全体の士気を高める上で非常に重要です。

しかし、「改めて言うのは気恥ずかしい」「どう伝えれば自然だろうか」と悩む方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、せっかく伝えても、相手に真意が伝わらなかったり、逆に不快感を与えてしまったりすることもあるかもしれません。

この記事では、アサーションの視点から、職場で感謝や励ましを効果的に伝える方法を具体的な会話例とともにご紹介します。相手を尊重しつつ、自分の素直な気持ちを誠実に伝えるアサーティブなコミュニケーションは、職場のポジティブな関係構築に役立つはずです。

アサーションとしての感謝・励ましとは

アサーションとは、「相手を尊重しつつ、自分の考えや気持ち、要求などを正直に、率直に、その場に適切な方法で表現する自己表現」です。これを感謝や励ましに当てはめると、単に形式的な言葉を述べるだけでなく、

といった要素を含めることが重要になります。これにより、受け取った側は「自分の行動が具体的に評価された」「自分の存在が認められた」と感じることができ、よりポジティブな気持ちになりやすいのです。

【シーン別】感謝・励ましのアサーション会話例

シーン1:同僚が忙しい時に助けてくれた

自分が抱えきれない業務を、快く引き受けてくれた同僚への感謝を伝えます。

具体的な状況設定: 月末の締め切り間近で、自分の作業が間に合わない状況だった。隣の席の同僚Aさんが、自分の担当分を早く終え、声をかけてくれて一部の作業を手伝ってくれた。おかげで無事締め切りに間に合った。

NG例: 「Aさん、この前の作業手伝ってくれてどうも。助かりました。」 (感謝は伝わるものの、何がどう助かったのかが不明確で、形式的に聞こえる可能性がある)

OK例(アサーティブな伝え方): 「Aさん、この前の〇〇の作業、本当にありがとうございました。あの時、正直一人では間に合わないかと思っていたので、Aさんが手伝ってくださったおかげで無事締め切りに間に合いました。本当に助かりましたし、とても心強かったです。」

ポイント: * 「〇〇の作業」と具体的に示すことで、何に対する感謝かが明確になります。 * 「一人では間に合わないかと思っていた」「無事締め切りに間に合いました」と、相手の行動がもたらした具体的な結果を伝えます。 * 「本当に助かりました」「心強かったです」と、自分の素直な感情を添えます。 * これにより、相手は自分の行動が具体的に役立ち、感謝されていることを実感できます。

シーン2:後輩が良い提案や工夫をした

主体的に考え、良い結果につながる提案や工夫をした後輩を評価し、励まします。

具体的な状況設定: 入社2年目の後輩Bさんが、日常業務で使っている集計方法について、「もっと効率化できるのではないか」と新しい方法を提案し、実際に試してみたところ、作業時間が大幅に短縮された。

NG例: 「B君、新しい集計方法良かったよ。これからも頑張って。」 (評価していることは伝わるが、具体性がなく、次につながりにくい可能性がある)

OK例(アサーティブな伝え方): 「Bさん、新しい集計方法の提案、ありがとうございました。特に、〇〇のデータ処理にかかる時間が以前の半分以下になったのは驚きました。自分で問題点を見つけて、積極的に改善しようと試みた行動力は素晴らしいと思います。そのおかげでチーム全体の作業効率も上がりました。これからも、気づいたことがあればどんどん提案してください。」

ポイント: * 「新しい集計方法の提案」と、評価の対象を具体的に示します。 * 「〇〇のデータ処理にかかる時間が以前の半分以下になった」「チーム全体の作業効率も上がった」と、具体的な成果や良い影響を伝えます。 * 「自分で問題点を見つけて、積極的に改善しようと試みた行動力は素晴らしい」と、成果だけでなく、プロセスや本人の主体性を評価します。 * 最後に「これからも、気づいたことがあればどんどん提案してください」と、今後の行動への期待と励ましを伝えます。

シーン3:チームで困難な目標を達成した

チーム全体で協力し、難しい目標を達成した際に、互いの努力を認め合い、労います。

具体的な状況設定: 四半期の売上目標が非常に高く、チーム全体で協力し、残業や休日出勤も乗り越えて、最終的に目標を達成できた。

NG例: 「みんなお疲れ様。目標達成できて良かった。」 (労いではあるが、個々の貢献や苦労への言及がなく、一体感に欠ける可能性がある)

OK例(アサーティブな伝え方 - リーダーまたはメンバーから): 「皆さん、今四半期、本当に本当にお疲れ様でした。特に、厳しい目標達成のために、〇〇さんの尽力や、△△さんが積極的に□□をサポートしてくれたことなど、一人ひとりが自分の役割を果たし、そして互いを助け合ったからこそ、この目標を達成できたのだと思います。特に最後の追い込みは大変だったと思いますが、最後まで諦めずにチーム一丸となって頑張り抜いたことを、私は心から誇りに思います。皆さん一人ひとりの貢献に感謝します。」

ポイント: * 具体的な個人名(〇〇さん、△△さん)を挙げ、その人がどのような貢献をしたか(尽力、サポート)を具体的に伝えます。これにより、個々の努力が認められたと感じられます。 * 「互いを助け合ったからこそ達成できた」と、チームとしての協力体制を称賛します。 * 「最後の追い込みは大変だったと思いますが」「最後まで諦めずに」と、共有された困難や努力のプロセスに触れます。 * 「心から誇りに思います」「皆さん一人ひとりの貢献に感謝します」と、自分の率直な感情と、チームメンバーへの深い感謝を伝えます。

シーン4:失敗して落ち込んでいる同僚を励ます

業務でミスをしてしまい、自信をなくしている同僚に対して、寄り添い、励まします。

具体的な状況設定: 同僚Cさんが、担当していた重要なプロジェクトでミスをしてしまい、落ち込んでいる様子。

NG例: 「大丈夫だよ、気にしないで。誰にでもあることだから。」 (慰めではあるが、抽象的で、相手の気持ちに寄り添えていない可能性がある)

OK例(アサーティブな伝え方): 「Cさん、今の状況、心中お察しします。今回のことは、確かに大変だったと思いますが、Cさんがこれまでこのプロジェクトにかけてきた努力や、〇〇(過去の成功事例など)で素晴らしい成果を出したことを、私は知っています。今回の経験を次に活かせるように、もし私にできることがあればいつでも言ってください。一緒に考えていきましょう。」

ポイント: * まず「今の状況、心中お察しします」と、相手の感情に寄り添う姿勢を示します。 * 失敗そのものを軽く見るのではなく、「確かに大変だったと思いますが」と現実を受け止めつつ、相手の過去の努力や成功(具体的な事例を挙げられると良い)を認め、励ましの根拠とします。 * 「今回の経験を次に活かせるように」と、前向きな視点を提示します。 * 「もし私にできることがあればいつでも言ってください。一緒に考えていきましょう」と、具体的なサポートの申し出と協力の姿勢を示します。これにより、相手は一人ではないと感じられ、再起への意欲につながりやすくなります。

ポジティブなアサーションを実践するためのヒント

まとめ

職場で感謝や励ましをアサーティブに伝えることは、単に相手を良い気持ちにさせるだけでなく、相互の信頼関係を深め、チーム全体のパフォーマンス向上にも繋がる重要なコミュニケーションスキルです。

「具体的に伝える」「感情を添える」「相手の貢献や努力を認める」といったアサーションの要素を取り入れることで、あなたの感謝や励ましはより相手に響き、ポジティブな影響を与えるでしょう。

今回ご紹介した会話例を参考に、ぜひあなたの職場でアサーティブな感謝・励ましを実践してみてください。小さな一歩が、より働きやすい、より良好な人間関係を築くきっかけとなるはずです。