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職場で指示が曖昧な時のアサーション:確認と質問の具体的な会話例

Tags: アサーション, 職場, コミュニケーション, 指示, 会話例

曖昧な指示はなぜ困るのか:正確な仕事のためのアサーション

職場で上司や同僚から仕事の指示を受けた際、その内容が曖昧で、どう進めれば良いのか判断に迷うことは珍しくありません。期日、範囲、目的、具体的な手順などが不明確な指示は、不安を招くだけでなく、業務の遅延やミス、手戻りの原因となります。

しかし、「確認したいけれど、忙しそうだし聞きづらい」「何度も聞き返すのは失礼かもしれない」「自分で判断して間違えたらどうしよう」といったためらいから、曖昧なまま作業を進めてしまい、結果として問題が発生するという悪循環に陥るケースも少なくありません。

このような状況で役立つのが、アサーションのスキルです。アサーションは、相手を尊重しつつ、自分の気持ちや考え、要望を率直かつ誠実に伝えるコミュニケーション技法です。曖昧な指示を受けた際に、確認や質問を適切に行うことで、指示を明確にし、正確に仕事を進めることができるようになります。

この記事では、職場で曖昧な指示を受けた際にアサーションを活用して、指示内容を明確にするための具体的な確認方法と会話例を紹介します。

曖昧な指示への対応をためらう心理

なぜ、私たちは曖昧な指示に対してすぐに確認や質問をすることが難しいと感じるのでしょうか。そこには、いくつかの心理的なハードルが存在します。

これらの心理的なハードルを乗り越え、必要な確認を行うために、アサーションの考え方が力を発揮します。自分の仕事の質を高めるため、そしてチーム全体の効率を上げるために、不明確な点をはっきりさせることは、決してネガティブなことではありません。

アサーションで曖昧な指示を明確にするメリット

曖昧な指示に対してアサーションを使って確認・質問することには、以下のようなメリットがあります。

  1. 業務の正確性向上: 指示内容を正確に理解できるため、誤った方向で作業を進めるリスクが減り、質の高い成果につながります。
  2. 手戻りや無駄の削減: 作業の途中や完了後に指示との齟齬が発覚し、大幅な手戻りが発生することを防ぎます。結果的に、時間と労力を節約できます。
  3. 不安やストレスの軽減: 不明確なまま作業を進めることによる「本当にこれで合っているのだろうか」という漠然とした不安が解消され、安心して業務に取り組めます。
  4. 信頼関係の構築: 適切に確認・質問する姿勢は、責任感を持って仕事に取り組む姿勢を示すことにつながります。これは、上司や同僚からの信頼を得る上でも重要です。また、相手も自分の指示が曖昧だったことに気づき、今後のコミュニケーション改善につながる可能性もあります。

これらのメリットを理解することで、確認や質問を前向きに捉えることができるようになります。

曖昧な指示へのアサーション:具体的な会話例

ここでは、職場で曖昧な指示を受けた際の具体的なアサーションによる確認・質問の会話例をいくつかご紹介します。相手や状況に合わせて、表現を調整してみてください。

例1:簡単な確認(期日や範囲など)

上司から「あの資料、午前中に目を通しておいて」と指示があったが、今日の午前中なのか、明日以降の午前中なのか不明確な場合。

解説: まず「〇〇の件で確認させてください」と、何について話すのかを明確に伝えます。次に、自分が理解した内容(午前中)を伝えつつ、不明確な点(本日か、それ以降か)を具体的な言葉で尋ねます。「〜ということですが、〜でよろしいでしょうか」という形は、相手の指示を一旦受け止めた上で質問する丁寧な聞き方です。

例2:手順や目的が不明確な場合

同僚から「このデータを集計しておいてくれる?」と依頼されたが、何のデータを、どのような形式で集計すれば良いのか不明確な場合。

解説: 依頼内容を一度受け止めたことを伝えつつ、複数の確認事項があることを先に伝えます。データ範囲や形式など、具体的な内容をピンポイントで質問します。特に形式については、相手が普段使っている形式を提案するなど、具体的な選択肢を提示しながら尋ねると、相手も答えやすくなります。「〜で合っていますか?」「〜がよろしいでしょうか?」という聞き方は、決めつけではなく確認のスタンスを示します。

例3:指示内容と自分の理解に齟齬がありそうな場合

上司から口頭で複雑な指示を受けたが、メモを取りきれず、自分が理解した内容に自信が持てない、あるいは指示に矛盾を感じる場合。

解説: 指示内容の理解に不安があることを正直に伝えます(「私の理解を確認させてください」)。自分が理解した内容を具体的に要約して伝え、相手に「これで合っていますか」と確認します。特に不明確、あるいは自信がない部分を具体的に挙げて質問することで、相手もどこを補足説明すれば良いかが明確になります。この方法(パラフレージングと呼ばれることもあります)は、自分の理解度を確認する上で非常に有効です。

アサーションによる確認・質問の実践ポイント

曖昧な指示への対応にアサーションを実践する上で、いくつか意識しておきたいポイントがあります。

まとめ

職場で曖昧な指示を受けた際に、そのまま放置することは、業務の非効率化やミス、そして自分自身のストレスにつながります。アサーションを活用して、相手を尊重しつつ、必要な確認や質問を適切に行うことは、正確に仕事を進める上で不可欠なスキルです。

今回ご紹介した会話例や実践ポイントを参考に、まずは小さな一歩から試してみてください。「〇〇の件で、一つ確認させてください」という短いフレーズからでも構いません。正確なコミュニケーションを心がけることで、仕事の質が向上し、職場の人間関係もより円滑になっていくことでしょう。

曖昧な指示に対するアサーションの実践は、あなたの自信を高め、より主体的に仕事に取り組むための第一歩となるはずです。