職場で頼まれごとをアサーティブに対応:曖昧な依頼・期日不明・多忙な時の会話例
職場で仕事を進めていると、様々な人から頼みごとをされる機会があります。時にその依頼が曖昧だったり、期日がはっきりしなかったり、あるいは自分が既に多くの業務を抱えている最中だったりすることもあるでしょう。このような状況で、相手の依頼を安請け合いしてしまったり、確認せずに引き受けて後で困ってしまったり、断れずに抱え込んでしまうといった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
アサーションは、このような状況において、相手を不快にさせずに自分の状況や考えを正直に伝え、建設的な解決策を探るための有効なコミュニケーションスキルです。ここでは、職場で頼まれごとをされた際に、アサーティブに対応するための具体的な会話例を状況別に解説します。
曖昧な頼みごとをされた時のアサーション
依頼内容が具体的でなく、「これ、お願い」「ちょっと手伝ってほしい」といった曖昧な頼まれ方をされた場合、詳細を確認せずに引き受けると後々誤解が生じたり、想定外の作業が発生したりする可能性があります。このような時は、具体的な内容を確認することが重要です。
状況: 同僚から「この資料、来週までに見ておいてくれない?」と依頼されたが、資料の目的や具体的に見てほしい点が不明確。
NGな対応例: 「はい、分かりました。」 (そのまま資料を受け取り、何をするべきか分からず困ってしまう)
アサーティブな対応例: 相手の意図を確認し、具体的なアクションを明確にするステップです。
- 感謝と一度受け止める姿勢を示す: 「資料の件ですね、ありがとうございます。」
- 具体的な内容を確認する: 「この資料ですが、具体的にはどの部分を見て、何をすればよろしいでしょうか。例えば、内容のチェック、誤字脱字の確認、構成に関する意見、それとも特定のデータ検証でしょうか。」
- 目的や背景を尋ねる: 「差し支えなければ、何のためにこの資料が必要なのか、背景を教えていただけますでしょうか。」
このように具体的に質問することで、依頼の意図や必要な作業内容を明確にし、自分が適切に対応できるか判断する材料を得られます。
期日が不明確な頼みごとをされた時のアサーション
「急ぎじゃないんだけど」「時間のある時でいいよ」といった形で期日が明確でない依頼は、他の優先度の高い業務に埋もれてしまったり、かえって対応が遅れて相手に迷惑をかけてしまったりすることがあります。アサーティブに対応するためには、必要な期日を確認するか、対応可能な時期をこちらから伝えることが有効です。
状況: 上司から「あの件、落ち着いたらでいいから進めておいてくれる?」と依頼されたが、具体的な期日の指示はない。
NGな対応例: 「はい、分かりました。落ち着いたらやります。」 (いつ「落ち着く」のか不明確なまま、他の業務に追われて着手できない)
アサーティブな対応例: 期日を確認し、自身の状況を踏まえた調整を行うステップです。
- 依頼内容を復唱し、感謝を示す: 「〇〇の件ですね、承知いたしました。」
- 期日の目安を確認する: 「この件ですが、いつ頃までに対応を完了すればよろしいでしょうか。何か希望の期日はございますか。」
- または、自身の状況を踏まえて可能な時期を伝える: 「現在、△△の業務を抱えておりまして、来週後半までには目処が立つ見込みです。もし可能でしたら、来週後半から着手、あるいは再来週での完了を目指すという形でもよろしいでしょうか。」
期日を明確にすることで、自身のタスク管理がしやすくなり、相手もいつ頃に完了するかの見通しを持つことができます。
多忙な時に頼みごとをされた時のアサーション
既に多くの業務を抱えており、新たな依頼を引き受けるのが難しい状況はよく発生します。この時、無理して引き受けてしまい、全ての業務がおろそかになったり、体調を崩してしまったりすることは避けたいものです。かといって、ただ「無理です」と断るだけでは、相手との関係を損ねる可能性があります。
状況: 複数の業務が立て込んでいる最中に、別の部署の先輩から緊急ではない頼みごとをされた。
NGな対応例: 「すみません、今忙しいのでできません。」(ややぶっきらぼうに聞こえる可能性がある) 「はい、大丈夫です。」(無理して引き受け、残業で対応する)
アサーティブな対応例: 現在の状況を伝えつつ、相手の依頼内容も考慮した建設的な姿勢を示すステップです。
- 依頼を受けたことへの感謝と状況説明: 「〇〇さん、この件についてお声がけいただきありがとうございます。大変申し訳ないのですが、現在△△と□□の業務対応に追われておりまして、今日の終業時まで、あるいは明日午前中いっぱいまで他の業務に時間を割くのが難しい状況です。」
- 代替案や協力できる可能性を提示する: 「もし、来週の月曜日までお待ちいただけるようでしたら、確実に時間を確保して対応できます。あるいは、もしお急ぎでしたら、他に担当できる方や、私が一旦手を離しても問題ない業務がないか、一度確認してみることも可能ですが、いかがでしょうか。」
- 協力できない場合の断り方を丁寧に伝える: (代替案が難しい場合や、どうしても対応できない場合) 「大変心苦しいのですが、現在の状況ですと、ご期待に沿えるような対応を期日までに行うことが難しいです。部署内で他にも対応可能な方がいらっしゃるか確認してみてはいかがでしょうか。」
このように、単に「できない」と伝えるのではなく、なぜ難しいのか理由を簡潔に伝え、いつなら可能か、他の選択肢はないかなどを提示することで、相手は状況を理解しやすくなります。また、協力しようとする姿勢を示すことで、関係性を維持しやすくなります。
まとめ
職場で頼みごとをされた際にアサーションを活用することは、自分自身の業務管理を適切に行い、抱え込みを防ぐだけでなく、相手との間に建設的なコミュニケーションを築く上でも重要です。曖昧な依頼には内容の確認、期日不明な依頼には期日の設定、多忙な状況では正直な状況説明と代替案の提示など、状況に応じた具体的な対応を実践することで、より円滑で健全な職場環境を築くことができるでしょう。今日ご紹介した会話例が、日々の業務におけるコミュニケーションの一助となれば幸いです。